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 ハエにまつわるもう一つのストーリー 

ハエの話をしたついでに、もう一つハエの思い出話を。

2004年夏、私は南イタリア・プーリャ州にしばらくいたことがある。そのことも詳しく「トスカーナ日記」 で紹介している。

その中ではしていない、ハエにまつわる話がある。
私が住んでいたのは、半地下になっている一室だった。
暑い南イタリアで、ほとんど光の入らず、背に崖を背負っているような部屋は、涼しくていいのだけれど、欠点は湿度が高くて虫が多いこと。
小指の先ほどの大きさの団子虫が、たくさん這っていて、掃いても掃いても出てくる。虫除けの薬を撒いても、出てくる。

だから、そのうちあきらめた。

どうせ、床を這っているだけだ。寝床までは入ってこない。入ってきたところで、害はない。

だが、サソリはさすがに怖かった。
刺されると痛そうなので、靴で叩いて殺した。

サソリさん、安らかにお眠り下さい。

もちろん、ハエもいた。でも、たいしたことなかった。
トスカーナの農場より、ずっと少なかった。

が。

ある日、とてつもない数のハエが大量に発生した。

すさまじい、というのにふさわしい、恐ろしい数。そして活気。浅ましいほど嬉々として飛び回っている。

何かがあったな、と思った。
発生場所はすぐに見つかった。浴室の排気口。
そこにスズメの巣があったのだが、その日、子スズメが天国へ旅立ってしまった。

やっぱりな、と思った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この日の数日前、一緒に暮らしていたヴァレリアがはしごを持ち出した。

「何するの」

と聞くと、

「スズメの子を見るの」

と言った。ヴァレリアは動物に自信のある人だった。特に鳥が好きで、手懐けるのが上手かったけど、それはアヒルや鶏であって、野鳥とは違う。その辺の区別が、多分彼女にはなかった。

見ないほうがいいんじゃないの、と思ったけど、私は何も言えなかった。
見ただけではなく、彼女は手を伸ばしてスズメの子達に触れた。そして、幸せそうだった。
案の定、その日以来、親鳥は人間の匂いのついた子供達の元に戻らなくなった。

そして子スズメは死んでしまった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


私はヴァレリアを呼んだ。
ヴァレリアはまたはしごに登り、中を覗くと、木の棒で中の巣をかき出した。
皮が破けあばら骨がむき出しになり、蟻に内臓を喰われてすっかり中が空っぽになってしまった、見るも無残な灰色のスズメの子が数羽、羽毛や枯れ草と一緒に、ポトリと落ちた。
もう体の中は何もないのに、硬くつぶった眼が、何かに必死に耐えるようで、それが哀れだった。

「死んでたのね」

彼女はそう一言言って、はしごを片付けた。
スズメはいなくなり、ハエもそのうち姿を消した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魂でものごとを感じろ、と言うのは分かる。音楽、芸術、そして自然も。
だけど自然に対しては、それだけでは足りない。常に科学の目を持って冷静に接する姿勢が重要ではないだろうか。さもないと、動物や自然にに対する愛情は、ただの人間のわがままになってしまう。

もっとも、私は科学的な人間とは程遠い、感性優先の人間ではあるけれども。

20070228221138.jpg


●今週より内容が変わりました。●
月火 シチリア島への旅
水木  イタリア風物詩
金  我が家の大改造計画(写真中心に改築の様子をお見せします)
土日 イタリア人の彼と彼の家族との生活


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2007/04/19 | 09:27
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 子羊のいけにえ(注:かなり刺激が強い写真があります) 

去年のクリスマス前のこと。
おかあさんが、
「今日は農家に子羊を取りに行く日」
と、とても嬉しそうだったので、私は何も考えずに、
「一緒に行く」
と言ってしまった。
その子羊の肉が、まさか丸々一匹だとは知らずに。

20070226185613.jpg


新聞紙に包まれて、まるで人のなきがらのように抱っこされて家に来た子羊ちゃん。
包みから出された時は、はっきり言って最初は仰天しました。もうちょっと生々しくない写真を・・・と思ったんですが、どの角度から見ても子羊ちゃんなので。
中は、心臓と肝臓以外は取り除いてきれにしてあります。
取りに行ったのが夜だったので、とりあえず納屋に宙吊りにして保管。

20070226190032.jpg


次の朝、早速解体作業。こちらは心臓と肝臓。
心臓は煮込みに、肝臓は揚げて食べました。
この子はまだ草を食べていないので、胃(腸なのか?)の中はおかあさんのお乳だけ。
こちらもきれに洗って食べます。

20070226190321.jpg


ここまで来ると子羊ちゃんはすでに「肉」。
考えてみると、我々はマグロの解体を見ても「ひえー」とは思わない(むしろ、うまそう、と思う)けど、四足動物の解体には抵抗を感じてしまう。
日本人は子羊は通常食べないけど、牛や豚は食べるんだから、こう言うものを見せられて顔をしかめるのは、非常に身勝手。
これが人間の食生活の現実なのだよね。
なんでも大事に食べないといけないな、と改めて思いました。

20070226190911.jpg


せっかく頭があるので、解剖の時間。ここが小脳、ここが舌で・・・甥っ子ロレンツォ君を前に、お父さんピエロが解説。
と、横からおかあさんが一言、
「脳みそはおいしいよ。余るところなんてないんだからね」

さすが、この世代は国を超えて「もったいない精神」をしっかり持っているのだなあ、と関心。
その点、我々世代はどうも甘い。買っては捨てる「使い捨て世代」。
まして食べ物は命を貰うものなのだから、感謝して頂くことを忘れないようにしたいものです。

ところで、子羊のお味のほうですが、本来ならこんなに若い赤ちゃん羊の肉、大ご馳走なのだけれど、残念ながら私はダメでした。
なんというか、すべてが乳臭い。しかも羊臭い。肉は柔らかいけど、ひたすら柔らかくて脂っぽい感じ。
イタリア料理で苦手なものはほとんどないなかで、これだけは「勘弁」して。 アップロードファイル

ごめんね、羊ちゃん。でも、このうちの人たちがみーんな食べてくれるから安心して成仏してね。 

●来週よりまた内容が少々変わります。●
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金  我が家の大改造計画(写真中心に改築の様子をお見せします)
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2007/04/15 | 09:54
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 あだ名は天気予報士 

20070215143350.jpg

この木が温度計をくくり付けてある木。

20070216193307.jpg

その温度計をチェックするのが彼の日課。

モーリ君は、いつも天気のことばかり考えている。
日本とイタリアに分かれている間、国際電話で最初に告げられるのは、今日の天候。

「本日は晴れ、風強し。気温は朝晩冷え込むけど、日中は暖かし。そっちはどう?」

と、こんな感じ。

口を開けば天気の話をする弟を、イサは「天気予報士」(Meteorologo:メテオロロゴ)と呼ぶ。図らずも、そのあだ名は私が心の中で彼を呼んでいたものと同じだった。

「この子はちっちゃい時からずーっと天気のことばっかり言っているわよ。四十年たってもおんなじ」

成長してないってこと?ソ猝ヨ

モーリ君はテレビで天気予報が始まれば、動かしていた口も手も、全ての動きを止めて、一点集中画面に見入る。その時に話しかけても一切無駄。天気予報以外の音は耳に入らない。

テレビを見るだけではない。
自ら雲の動き、風の方向を、毎日チェック!
そして今後の予報を立てる。

「これから2、3時間後に雨が降るよ。でも、降っても1時間だね。降る範囲は、家から半径200メートル」

これが、意外とかなりの確率で当たるのだ。っていうか、かなりローカルな天気予報なんですけど・・・・・・。

当然、気温のチェックも厳しい。
当家には温度計が二つある。一つは、家の正面の木にくくり付けてある。もう一つは、二階の窓に置いてあり、外と内の両方の温度計をチェックできる。
彼は必ず最低でも朝晩の二度チェックし、そしてそれを私に当てさせる。

「今、何度だあ?」

うるせえ、オマエは石原良純かあ? え

・・・・・とは、言わないけど(言わないだけだけど)、結構うざい、と最初は思った。
だけど、毎日繰り返されているうちに、この「うざい質問」にもすっかり慣れてしまった。それどころか、こっちも真剣に温度を当てるようになり、当たる様になるから面白い。

「10度」
「そんなにないね。8度だ」

そうかな、結構今日は暖かいよ、と私が思っていると、本当に10度だったり。

「ほらあ、私のほうが正しいじゃん」
「おかしいなあ、この時期はそんなに暖かいことないんだよ、大体8度だって高いぐらいなのに」

そう、確かにこの冬は全世界的に記録的な暖冬だった。日本だけでなく、イタリアも例外ではない。

モーリ君の天気予報も、地球暖化のせいでそのうち役に立たなくなってしまう日が来るのかもしれない。
なんだか、最近そのことを考えると背筋が寒くなってくる。

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2007/04/01 | 08:39
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 イタリア人、車で日本に行く?! 

友人が彼のことを、
「イタリア人ぽくない、なんだかドイツ人みたい」
という。本人もどうやらそう思っている節があり、愛車はイタリア車フィアットではなく、ドイツ車フォルクスワーゲンゴルフ
でもいまどきのちょっとカッコイイ、ゴルフではなく、ちょっと古い感じのするゴルフに、もう10年乗っている。
買ったときは新車だったものの、10年も経てばもう見る影もない。それどころか、はっきり言って乗りすぎである。
10年という歳月が、ではなく距離が、である。

去年の夏、愛車ゴルフの走行距離は33万キロを突破した。
それでも本人は「まだ新車だ」と言い張る。

そんな訳ないでしょ、ちょっとおかしいんじゃないの、である。
大体、330000キロも走った車なんて、日本でお目にかかったことがない。仕事で走る車は、そのぐらい走っているかもしれないけれど、個人の持つ車がそんな距離はなかなかいかない。

彼がそれだけ車に乗るのには訳がある。
今、彼は月曜から木曜までをポテンティーノ城のワインつくりを手伝い、金曜から日曜は自分の農場で働いている。ポテンティーノ城から自宅まで、約100キロを毎週往復する。特に秋のワインの仕込み時期は、自分のワインの面倒のために、なんとこの距離を毎日通う。高速なんてなく、フツウの山道を吹っ飛ばして走らせる。
ポテンティーノ城にいる間も、何かとグロセットや近隣の町に出かけることも多く、畑で過ごすのと同じぐらい、車に乗っている時間も案外多い。

この間、さすがに33万8千キロを越えたとき、整備工のいとこの所に持ってき点検をしたが、いとこのピエロ曰く「まだ走れる」とのことだった。まだ、ってどのくらいなんだよぅ・・・・。

「ほーら、だから言ったじゃない、これはまだ新車だって。これで日本にも車で行けるなぁ」

お願い、日本に来るときは車や止めて。

だけど、新車をほどほどに乗って中古車として売るのも賢い選択なのかもしれないが、こんな風に「完璧に、最後の最後まで乗り潰す覚悟」、なかなか最近の日本ではお目にかかれないじゃないか。もしかしてこの人は、我々日本人が見習うべき素晴らしい「エコ・ライフ精神」を持っているのかもしれない。

・・・と最近、そう思うことにしている。

20070130205503.jpg
これは去年夏の撮影。只今記録更新中。

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2007/03/11 | 10:15
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